No.026 バイオがくる! と信じたい

 
NEDO実用化開発実験により設置されたラント例(月島機械hpより)

最初から言い訳がましくて恐縮だが、今回の提言はあくまで筆者の「そうなったらいいなぁ・・・」という希望的観測に終始することをお許し願いたい。
もとより、当方機械工学は言うに及ばず、バイオ(ここで言うのはバイオマスエタノールのエネルギー。以下バイオと略す)の基本である化学なんぞ、まったくの門外漢であることもお断りしておく。したがって、ここではバイオが日本国内でどのように進捗しているかの検証を主としたい。

バイオエネルギーは基本的にはサトウキビ、とうもろこし、廃木材などのバイオマス資源を発酵し、蒸留して作られる植物性のエチルアルコールのことで、新たな燃料用エネルギーとして注目される。「バイオエタノール製造施設(プラント。小規模でも製造出来ることも実証されている)」で作られたエタノールは、自動車やボイラー等の燃料としての利用とその範囲が期待される。
さらに、Vol.23でも述べているように、バイオに含まれる炭素は植物の光合成によって固定された大気中の二酸化炭素に由来することから、エタノールの燃焼によって二酸化炭素が大気中に放出されても地表に存在する炭素の総量は変化しないと考えられている。つまり、温暖化対策にも寄与できる可能性は大いに高い。


バイオマスは一般に生物起源の原料を表し、燃料や生分解性プラスチックなど様々な化成品変換し利用される。植物はCO2を吸収して成長し、新たな原料となるため、バイオマスは再生可能な持続的資源と見ることができる。(月島機械hpより)
 
2001年に米国から技術導入したバイオマスエタノール技術は、木質系廃棄物から高い収率で製造する技術。米国ではバガス(サトウキビの絞り滓)を原料にパイロット規模で実証している。月島機械はその技術を建築廃材 に適応できるよう環境プロセス開発センター(千葉県市川市)でパイロットテストを実施し、技術確立を進めてきた。そこでは従来では利用できなかったC5糖分をエタノールに変換する組換え菌を用いることで、様々なバイオマス廃棄物から高い収率でエタノールを製造することができることを実証した。(月島機械hpより)

もちろん問題点がないわけではなく、それらがすべて解決されているわけでもない。しかし、これからリストアップする企業が熱い取り組みを行っていることも事実で、そのさわりだけでもお伝えしたい。

高級車レクサス・ハイブリッドの登場で自動車会社の生きる道は、まるでハイブリッドオンリーのように伝えられている。当面の課題として「燃費の削減」はもちろん急務だ。しかし、この先ずっと内燃機関側の燃料が化石燃料依存でいいのだろうか。そこは中長期で見ればいささか疑問だ。
当方の「妄想」は、ハイブリッドの普及⇒バッテリー(蓄電技術)の飛躍的な進化⇒派生的にEVの進化⇒内燃機関の変貌(バイオなどへの転換)・・・・というシナリオを勝手に描いている。

トヨタ自動車hpより。自動車(移動体)はガソリンと軽油。工場、家庭(固定使用)は電気が現段階では主流という構図だが、今後はバイオエタノールなどあらゆるエネルギーの選択肢があることを示した図。

これからのクルマは、自動車メーカーだけでは立ち行かない!?

さて、バイオの研究・開発と各企業はどのように取り組んでいるのだろうか。簡単なリストを作成したのでご覧いただきたい。

企業名

業態

主な取り組みなど

大成建設

建設業

建設廃材からバイオエタノール

清水建設

建設業

紙くずや生ゴミからバイオ燃料生産技術開発

サイバーファーム

サービス業

バイオ燃料

フジコー

サービス業

廃棄物バイオマスガス発電

アサヒビール

食料品

コメからエタノール生産

キリンホールディングス

食料品

バイオエタノール原料バイオ車燃料普及を模索
三菱商事と提携

オエノンホールディングス

食料品

コメからエタノール生産

双日

卸売業

商社、帝人と東大・慶大、環境技術開発で協力

日本食品化工

卸売業

トウモロコシでんぷん

帝人

繊維製品

双日と東大・慶大、環境技術開発で協力

東レ

繊維製品

バイオ燃料

エスイー

金属製品

バイオマス関連

DPGホールディングス

情報・通信業

バイオ燃料

大王製紙

パルプ・紙

バイオマスボイラー

ダイセル化学工業

化学

関大とエタノール効率製造

新日本石油

石油・石炭製品

バイオ燃料東大と研究

コスモ石油

石油・石炭製品

バイオ燃料の開発会社に出資

出光興産

石油・石炭製品

バイオ燃料

住友大阪セメント

ガラス・土石製品

バイオマス発電

タクマ

機械

バイオマス関連強化

クボタ

機械

バイオ燃料

月島機械

機械

木質系の廃棄物からバイオマス

荏原

機械

バイオ燃料

酉島製作所

機械

バイオマス

チノー

電気機器

バイオ燃料向け水分測定器

三井造船

輸送用機器

バイオ燃料、岡山県とも廃材利用バイオ

日立造船

機械

バイオ燃料

三菱重工業

機械

バイオ燃料

川崎重工業

輸送用機器

バイオ燃料、エコカー

トヨタ自動車

輸送用機器

バイオ燃料、エコカー

マツダ

輸送用機器

バイオ燃料、エコカー

ホンダ

輸送用機器

バイオ燃料、エコカー

スズキ

輸送用機器

バイオ燃料、エコカー

伊藤忠商事

卸売業

商社、バイオ燃料に力

丸紅

卸売業

バイオ燃料

長瀬産業

卸売業

バイオ燃料

三井物産

卸売業

商社、バイオ燃料に力

住友商事

卸売業

商社、バイオ燃料に力

三菱商事

卸売業

商社、バイオ燃料に力。キリンビールと提携

シナネン

卸売業

バイオマス燃料発電に需要の木材チップを販売

日立物流

陸運業

バイオ燃料導入加速、日立物流、一部車両にBDFなど

商船三井

海運業

バイオ燃料輸送

東京電力

電気・ガス業

ペトロブラスと交流協定

関西電力

電気・ガス業

バイオマス、石炭代替、発電所で利用

北海道電力

電気・ガス業

バイオマス、石炭代替、発電所で利用

ファーストエスコ

電気・ガス業

バイオマス発電

東京ガス

電気・ガス業

ごみからバイオガソリン

大阪ガス

電気・ガス業

バイオマス、石炭代替、発電所で利用

十勝振興機構

財団法人

規格外小麦を利用したバイオ

新庄市

地方自治体

ソルガム(こうりゃん)利用

新日鉄エンジニアリング

機械

食品廃棄物の利用

りゅうせき

沖縄県・宮古島

さとうきび

コンティグ・アイ

環境コンサルティング

岐阜大学・環境微生物工学研究室との共同で、ゴルフ場の廃棄芝からバイオを製造

もちろんこれがすべてではないが、名だたる企業がバイオと向き合っていることがご理解いただけたと思う。ざっとまとめてみると、

1. 自動車会社も、しっかりバイオと取り組んでいる。

2. 商社は軒並み国内、海外企業とあらゆる可能性を模索している。

3. 産・学共同で研究が行われているものが多い。

4. 石油元売りもバイオを注視していることが分かる。

どうやら、企業、学会はバイオの可能性を十分読んでいる。後は国と行政の問題のような気がする。時代の流れは間違いなく発電、蓄電、そしてバイオに向かっているのではないか。

最近のインタビューで社長に就任したばかりのホンダ・伊東孝紳新社長のコメントが少し気になった。
「20年くらいで、クルマはすべてハイブリッドになっていくのではないですか。もちろん私の考えですけどね・・・・」
確かにハイブリッドとは言ってはいるが、エンジンがずっとガソリンとは言っていない。どうやら自動車企業は、すでに数年先を読んでいる、と見た。

今後、何らかの形でバイオエネルギーに注目が集まることは間違いない。そこで企業や研究者に求められることは、
●バイオガソリン(E3といった表示。数字はガソリンに含まれるバイオエタノールの含有%)と、どう取り組んでいくのか。
●製造コスト(販売価格)、プラント、流通、インフラをどう解決していくか。
●機関側に負担を与えないための、燃料特性の均一化。
●内燃機関として、新たな問題点のクリア。
●食料を一切使用しないことへの配慮と徹底。
など、予想出来る問題は多岐に渡るものと推測する。

政界は相も変わらず、我が身の保身(総選挙前ということで)でガタガタやっている。誰か(政治家)、本気でエネルギー政策と取り組もうとする人はいないのだろうか。
以前から何度も述べているが、日本の石油燃料自給率は0.1%(事実上ゼロ)なのだ。このままでいって、この国になんの展望があろうと言うのか・・・・・。

2009.07.16記


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