「ティザー」。英語の「ティーズ」=「じらす」を語源としているそうだ。
次期プリウスが、様々な発表前キャンペーンで、未だデビューしていないのに6〜7万台もの先行予約を受けた。
今までの常識で言えば、新車はメーカーにとって発表まではトップシークレット。事前に、その姿を見せることは原則としてなかった。しかし、この不況(販売低迷)。なりふりなんぞに構ってはいられない。「ティザー」、つまりユーザーをじらして注目を浴び、少しでも販売促進につなげようと必死だ。その既成概念破壊型の成功例が次期プリウスだったわけだ。
次期プリウスはGW時期に、海老名、浜名湖、三木の各サービスエリアに展示された。サイトでの顔見せや記者対応ならともかく、これはかつて例を見ない大戦略だった。SAに立ち寄った人たちからしても、あまり見たことのない光景だったに違いない。ただ、彼らにとって尋常ではない渋滞疲れの後で、どのくらいの注目意欲があったかはさだかではない。
この、 「あのトヨタでさえ!」 が、自動車各社に火をつけたことは間違いない。
5月20日発表の新型レガシィ htt://www.subaru.jp/legacy2009/ (富士重工)、6月11日発表の新型アクセラ(マツダ http://www.mada.co.jp/home.html )、7月発表のスカイライン・クロスオーバー http://www.nissan.co.jp/SKYLINE/CROSSOVER/ (日産)で、試乗会や事前サイトデビューを行っている。
なんのことはない、じれているのはユーザーではなく、販売不振で頭を抱えるメーカー側なのかもしれない。
元・自動車雑誌屋から言わせてもらえば、こういう事態だと雑誌の販売も相当きびしい。そりゃそうだ。雑誌を買わなくても、パソコンで検索できたり(お手軽スクープ気分)、実際に目撃、試乗できてしまうわけだから、これは専門誌業界にとっても深刻だ。
いわゆる正統進化型の新型レガシィ。富士重工の看板車種だけにいろいろと戦略を練ったあとがうかがえる。CMキャラはロバート・デニーロと超大物俳優を起用! |
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マツダが導入する新型アクセラ。すでに海外のショーではお披露目をしている。5月14日の段階ですでに予約受注を開始しており、価格は166万円から267万8000円となっている。つまり、販売価格も事前に公表していることになる。 |
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専用サイトによると、「ラグジュアリークーペとラグジュアリーSUVのパーフェクトフュージョンから、新しいジャンルのスカイラインが誕生」と書かれている。BMW X6のコンセプトに似ているような気がしないでもない。世の中の景気動向次第では注目のジャンルであることだけは言い切れる。 |
ティザーだけではクルマは売れない
さて、果たして各社が期待する「ティザー効果」だが、次期プリウスのようにいくのだろうか。私の予想では、答えはノーだ。
次期プリウスは、新しいクルマであることは間違いないが、世相(不況)を反映して劇的に注目されたものと見ている。
それは、1にも2にも「エコ=燃費」ではないだろうか。現在求められている最大級の付加価値とは、類まれな経済性だ。時を前後してホンダ・インサイトが戦略的な低価格設定でデビューし、今も絶好調の販売状況が続いている。現時点での次期プリウスの価格は不明だが、インサイトを意識した設定になることは間違いない。そして相乗効果で、この2車種が当分の間しのぎをけずる構図となるだろう。
今、多くのユーザーが注目し、購買意欲がそそられる条件とは、「安い、燃費いい」の一点に集中しているのだ。
残念なことではあるが、新車、すなわち従来型から進化した形、というだけで注目を浴びたり、飛躍的な販促を望むことは困難であろう。
今のマーケットが求めている付加価値とは、上記の条件をクリアした上で、さらにもう一つエスプリを加えたものということになる。
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このトヨタiQにスポーツ仕様! 当然ながら外観意匠は激変させるだろう。リッター23kmの経済燃費はそのままに、サスペンションをかため、6速マニュアルミッションなどスポーツテイストを惜しみなく投入する予定になっている。 |
例えば写真のトヨタiQ。このクルマをベースにしたスポーツカーを200万円以下の設定で来年に投入する予定で、豊田章男次期社長の肝いりで進められているという。
彼の若さと真の自動車好きの発想は、エコと経済性は維持し、そこに入念な「走りのテイスト」を植えつける。いわば遊び心の覚醒だ。
ユーザーが求めることとは意外と単純で、財布のヒモは固いなりに贅沢な時間や空間は求めるものだ。そこにジャストフィットするかどうかが販促成否の分岐点ではないだろうか。
改めて言おう。「ティザー」は手段であって目的ではない。クルマに限らないが、いかなるモノでも「時代」を反映したものこそ主流となり得る。小手先はもはや通用しない。
2009.05.14記
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No.004 自動車雑誌よ、どこへいくの?
長期に渡り自動車専門誌に関わってきた関係上、積極的ではないにしろ、自動車雑誌の動向が日々気になっている。
現在では私の孫、ひ孫(世代じゃないですよ!)の代が現場を担っている。だから、知っている編集者はほぼ皆無だし、多少交流があった直系世代の人も、フリーになるか、おエラいさんになっているかだから、とんとご無沙汰しているというのが偽らざる実情だ。
自動車雑誌のみならず、他の専門誌も含め出版事業は百年に一度の氷河期を迎えている。要するに売れないのだ。ひと昔前だと、出版は不況に強いと言われてきたが、今やその「かつて」はまったく通用しない。この不況がすべての既存の常識を受け入れないからに他ならない。それほどの背景があるから、ちょっと飛躍するが、オバマさんが「Change!」を訴えてアメリカ大統領に就任したことや、米ビッグ3が未曾有の窮地に立たされていることに「え〜っ!」と思うより、「時代だね〜」になるでしょ?
変化とは、残酷な面もあるけれど、人が営むにあたっての避けることのできない必然でもあるわけだ。
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写真はキャデラック2009CTS。文字通りGMの威信を示したようなフラッグシップモデルだ。
No.033 自動車生き残りの道は「イノベーション」しかない!
年が明けて6日も過ぎると、昨年のデータが集計されてその数字に各界は一喜一憂することになる。
自動車の製造と販売は、何と言っても長い間日本のみならず世界の牽引役(景気)を担ってきたから、その動向に注目が集まるのは当然のことだ。結論から言えば、国内に関して数値的には悲惨な状況であることは否定できない。数字というものは妙に具体的なゆえに一見説得力はあるが、ここではちょっと斜め目線で見てみたい。
まず中国が自動車販売台数でアメリカを抜いた、というデータ。
アメリカの調査会社オートデータのまとめによると、’09年のアメリカ新車販売台数は約1043万台。これは前年比21%減、’82年以来の低水準だという。
一方の中国は1〜11月累計でも1223万台、年度予想では1300万台を超え、前年比42%増というとてつもない急成長を示している。’04年に500万台程度だったことを考えると、この伸び率は尋常ではない。各国の自動車メーカーが無視できないのも当然だ。
が、しかしである。ご存じのように中国の人口は13億人、アメリカは3億人。自動車の定着(普及)率という観点で見れば中国はアメリカに遠く及ばない。つまり中国がホンモノの自動車消費国になるためには、言われているような経済発展ではなく、’60年代の日本にあったような全国民が共通した所得倍増のようなムーブメントを形成する必要がある。いつの時代でも一部の人だけの恩恵であっては真の経済発展などあるわけがない。
そして肝心な我が日本。自販連と軽自連の発表によると、軽自動車を含む’09年の新車販売台数は460万9255台。この数字は前年比9.3%減、31年ぶりに500万台を割った数字ということになっている。
特に軽自動車を除く新車販売は深刻で前年比9.1%減の292万1085台で6年連続の前年割れ、さらに300万台を下回ったのは’71年以来38年ぶりのことだという。
軽自動車も前年比9.7%減の168万8170台で、3年連続でマイナスとなった。こちらも深刻な結果となっている。
国によって状況が違うのは当たり前
良し悪しはともかくとして、日本やアメリカと中国やインドとは、こと自動車に関して言えば、
歴史が違う。
技術が違う。
意識が違う。
No.008 上海モーターショー報道で感じた希望と不安
大盛況だった上海モーターショー。やはり人口の多さを感じる。このマーケットの生活水準が上がることが、世界の景気低迷に貢献?
今年の秋に開催される東京モーターショーへの出展企業が、折からの不況のあおりからか、激減している反面、今行われている中国・上海でのモーターショーが、ニュースから伝わるところによると、出展企業は1500社にものぼり大盛況という。
そりゃそうだ。なんといったって中国は世界一の人口国。そして、日・米・欧のGDPが軒並みマイナスなのに、この国だけはプラス。それも6%台でも低調と豪語するあたり、そのイケイケぶりは目を見張るばかりだ。オリンピック景気はまだ衰えていない。