高速道路が1000円で乗り放題、が話題になっている。 いろいろと能書きをタレる前に、この度の制度をかいつまんでご説明すると、
1. 2年間の時限措置である。
2. ETC搭載車、さらに乗用車に限定される。
3. 土日、休日に限られる。(高速道路入出時間のいずれでもOK)。
4. 大都市圏区間は、1000円内にカウントされない。つまり別料金。など。
ご存じのように、コースの取り方次第では何キロ走っても1000円ポッキリだから、 爆安に弱い日本国民にとって、不景気モードなんてなんのその。
● ETCの駆け込み購入に行列ができた。
● それが想定外だったためETC機械の供給が間に合わなかった。
● ETCを統括するORSE(社団法人 道路システム高度化推進機構)だけが
潤う施策なんじゃないかと詮索された。
● 意外と大渋滞が少なかった。
● フェリーや高速バス業界が悲鳴をあげた。
などニュース番組を賑わせたことだけは間違いなかった。
高速道路の有料、無料に関しては多くの方がさまざまな見方をされているが、 日本の場合、ある種の矛盾をはらんでいることだけは確かだ。
かつて、日本にあまりお金がない時に「道路こそ国の動脈!」とばかりに、高規格道路建設促進のために重量税を導入、道路特定財源にした。あの田中角栄元総理だ。いささか乱暴だったような気がしないでもないが、高度成長期だったから許される政策だったのだろう。問題は、今は時代が変わったのに、仕組みだけが連綿と変わらずにあることだ。
もともと、償還制(その道路が減価償却し終わったら無料)だったが、ある時からプール制に変更。税源を建設中の道路にも回すため、まず半永久的に日本の高速道路の無料化は事実上困難な構図ができあがったわけだ。
ドライバーはもっと怒るべきだ
道路特定財源(あの一般財源化計画は一体どこへいってしまったのでしょう?)とは、ガソリン税(年間約3兆2000億円)、自動車重量税(年間約5500億円)、石油ガス税(タクシーなどが使う液化ガスに課税。年間約130億円)の3つの税源から成り立っている。膨大な金額と言わざるをえない。
ざっくり言えば、受益者負担という大義のもとに、自動車保有者は車検時に重量税、ガソリン給油時にガソリン税を当たり前のように徴収され、道路建設やメンテナンスに貢献。あげくに、その自分たちの負担でできた道路を走行する際にもお金を払わされている、という理不尽な構図がまかり通っているわけだ。これっていささかでもおかしいと思うでしょ?
世界の高速道路事情は、簡単なところだけ表にしたので見てほしい。この表では分からないが、世界中を見渡しても有償資金で道路を作っている国なんか、実は日本しかない。
世界の高速道路事情
道路名 | 国名 | 料金など | その他 |
高速道路(NEXCO) | 日本 | 通常は1キロ当たり約25円程度 | ETCと一般支払いの併用 |
フリーウェイ | アメリカ | ほぼ無料 | 有料区間は存在するが、全線の約7% |
アウトバーン | ドイツ、オーストリア、スイス | 原則無料。2005年から12トン以上のトラックは有料 | ETCとGPSを併用して料金を割り出すシステム |
モーターウェイ | イギリス | 原則無料 | ただし、特殊なトンネルや橋には特別に徴収するシステム |
アウトストラーダ | イタリア | 有料 | |
オートルート | フランス | 原則無料 | |
高速道路 | シンガポール | 原則無料 | ただし、渋滞緩和のため、都市部通過ではERP子道路課金システム)で徴収。 |
道路(高速道路も)が、その国の動脈、流通手段であることなんて誰も異論を唱えるわけがない。その通りだからだ。そもそも論で言わせてもらえば、
● ETCとは、有料が前提だからこそ成り立っている。渋滞緩和は副次的なこと。
● なぜ、高速道路会社は民営化されたのに、こういう重大な決定(1000円乗り放題)を
民間会社が受け入れられるのでしょうか。
● 人は端的に与党の1000円策と民主党のほぼタダ策を比較したがるが、
そこには単なる1000円違いとは異なる構図が潜んでいる。
● 高速道路利用(1000円で)、人の移動による景気促進を図るのは結構だが、
1年前にガソリン暫定税率撤廃(わずか1ケ月で復活)にあたり、ガソリンが
安くなるとたくさん走るから低炭素トレンドに反して環境に良くない、
とおっしゃっていた与党の皆様の見解は、今回の走行促進策と、
どう論理整合するのでしょうか。
道路は国民のもの!
大都市圏はともかく、日本の7〜8割の地域では自動車(つまりは道路)が重要な移動手段を担っている。文字通りヒト、モノなどを運ぶ生活の糧、血流と言っても過言ではない。
つまりは、そこに掛かるコストが下がることで、諸物価の安定も含めて最大の景気対策になる。その発想こそが到達点になるべきはずだ。
旧態依然とした特定財源や高速道路建設にしがみつくことなく、国民が一番移動しやすいシチュエーションを確立することはできないものなのか。
与党政治家からは、高速道路料金がタダになったら、道路建設の借金返済や道路整備・補修の財源はどうするのかということが必ず取り沙汰される。結論から言えば、それは発想が根底から違う。
まず、道路に関わる財源をどう確保するか、というところから始めることをやめ、どうしたら誰もが公平かつ気軽に移動できるのか、という視点に立つべきだ。
ヒト・モノの移動の低コスト化が活性を生み、ひいては人を幸せに至らしめることは、誰が考えても当たり前のことだ。問題は、そうなる仕組みをどうしたら実現できるのか、ということに達する。
そのことについては経済アナリスト 山崎養世氏のト で詳しく解明されているので、ぜひご覧になることをお勧めする。
このコラムのキャッチタイトルどおり、時代の変化を考えないと、そのツケは必ず国民一人一人が負うことになりますぞ!
2009.04.14記