ここ数年、「ブレてない。」なんて言葉を耳にするようになってきた。
目標、目的をコツコツと積み上げる精神、
はたまたコレと決めた物事にまっすぐ向かう根性とでもいう事だろうか。
趣味の世界においては無縁の言葉であったはずが、情報量が消化しきれないほど
溢れている今では嬉々としていい状況である反面、迷いやすく、
あらぬ方向へ行ってしまいがちにもなる。「ブレてない」というのは
重宝するべき精神なのだろうと思う。
ま、言う事で自分に喝を入れている事にもなるからだろうが。
実生活ではブレまくりの筆者ではあるが、
こと好きな音楽に関しては全くブレずにいる。
またそれが仇でクラブミュージックやらクラシックなど他ジャンルには
まるで縁が無くなってしまった、というかてんでダメにしてしまったというか。
ある意味勿体無い思いをしているのも事実。
不器用なのは高倉健だけではないのだ。(古い)
最近のUKロックシーンはひとつ大当たりすると
その音楽に右にならえとばかりに似たような音が大量生産される。
どの商売も同じ事だが賢明な方法ではある。が、こちらとしては
たまったもんじゃない。「またこんな感じか。」とガクリ肩を落としてしまう。
若い頃ならちょっとした違いでも感じ取れるのかもしれないが
自称「ブレてない」オジサンは(便利な言葉だな。)とてもいい年しているので
ピュアなきらめきが無いのね。だからほんのちょっとの違いじゃ
感銘を受けにくくなっているのね。
いっそキリンが次の日にゾウになっていたくらいの衝撃が欲しいわけですよ。
え?似たような音が大量生産=ブレてないという事ではないかって?
イヤイヤイヤ。イエイエイエ。それは違います。
自分にとっての「ブレてない」とは、ビートルズから始まった脈々と受け継がれている
音や感覚がどのように表現されているか、またその精神がどう昇華されていくのか
を音楽から聴き取り、または雑誌のインタビューから読み取ったり、
ヘベレケになって倒れているアーティストの写真を見ながら
「なるほど、そういうことですか〜。」独り合点し、
牛歩な道のりで「これはブレてない。」とこれまた独りで勝手に判断していくわけです。
そこまでやって、やっとキリンがゾウになる衝撃を感じるんですな。
ウ〜ム、ここまで書いていてなんだが、筆者、何てめんどくさい、厄介な奴。
が、この一連の経過、もうず〜っとやっているわけで
これこそが唯一「ブレてない。(便利な言葉だな〜。)」のかもしれない。
架空のバンドのライブというコンセプトで作られた、世界で最も有名な
トータルアルバムの類い。とは言うものの、トータル性はゼロ。
いつも通りのビートルズ。「架空のバンドのライブ」という絶妙なコンセプトが
トータルという便利な言葉によって一人歩きしたように自分的には思える。
この時期あたりからポールが主導権を握り始めてジョンがやる気ゼロ、なんて
話がよくあるがホントか?と思うほど名曲ぞろい。
制作期間もたっぷりの700時間。この間、誰にも曲の進行状況など
全くの秘密にしていたらしい。完成したときにはかなり「してやったり感」が
あったそうでメンバー全員ほくそ笑んでいたと、ポール談。
どちらかというとアルバム制作前に長い休暇をとっていて、いざ久しぶりに
会ってみればメンバー全員、口ひげを生やしていたというそっちの方が、
トータル性高いなあと思うんだが。