共に今揺れに揺れている、という点で共通している。
片や日本のというより世界の屋台骨とも言えるグローバル企業だし、もう片方はようやく政権を自民党から奪還した現政権である。
両者は日本の未来にとって、好むと好まざるとにかかわらず大きなファクターを握っている。そんなことは誰でも分かっているだろうが、一見順風満帆と思えた両者の想定外とは「リコール問題」と「政治とカネ」である。前者は世界的(主にアメリカだが)な信頼性と、後者は内閣支持率や政党支持率に致命的とも言える影響をもたらした。
ことの重大さを如実に示したのは3月3日の報道ステーションの冒頭でトヨタの豊田章男社長自らが生出演したことからもうかがえる。
再び共通している点。
それは共にメディアによる集中的な報道に大きく影響を受けたことである。前者はアメリカ国内によるもの、後者は小沢幹事長ともども連日新聞紙面や映像に露出した。不誠実やダーティイメージがメディアの力学によって比較的簡単に作られてしまったことは否めない。
今さらメディアの公平性を問うつもりはないが、いささかの偏りも許されないという観点からは多少違和感を覚える。
本当のトヨタの底力を見せる時がきた
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まずトヨタ。
ほとんどの日本国民がアメリカのアクセル問題と日本のブレーキ問題がごっちゃになっているような気がしてならない。その対象が奇しくも今や奇跡的稼ぎ頭のプリウスであることも思えば象徴的だ。最初にお断りしておくがリコールは悪ではない。誤解を恐れず申せば日常茶飯事である。問題はメーカー側の迅速な対応、その一言に尽きる。
アメリカの暴走死亡事故にしても完全な科学的検証ができているものではない。もし、トヨタが儲けすぎだから許さない、という論理が微塵でもあったとしたら超がつく本末転倒である。
トヨタのさらなる誠実なクルマ造りと今後の迅速な対応を信じたいし、信じている。
メディアに望むことは、一にも二にもフェアで科学的な根拠に基づく報道に終始してもらいたいことである。間違っても感情的な報道は厳に慎むべきである。少なくてもトヨタがアメリカ国内で行っている事業の雇用人口は20万人にも達するのだから。
因みに日本のプリウスなどのブレーキ問題(現在全車回収修理中)であるが、トヨタ社内での検証によると回生ブレーキと油圧ブレーキへの自動変換タイムラグは回収前の状態で0.06秒だったそうである。その距離はわずか数10センチとも言われている。これを欠陥と見るかどうか意見が分かれるところだ。例えが極端だがバンクーバー・オリンピックでの女子スピードスケートのパシュートでは0.02秒差でメダルが金から銀になってしまったことを考えると100分の数秒でも軽視はできないだろう。
民主党よ、時計を逆回りさせるな!
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次に鳩山政権。
鳩山首相自身の贈与にしても、小沢幹事長の土地購入問題にしても誰から見ても胡散臭く思えたことは否定できない。ただそういう問題を長期化させて肝心なことに目を向けることが出来ない政治状況こそ不幸である。
野党慣れしていない自民党は、ひたすら政治とカネの一点で国会質疑を行うことはもっと不幸である。それは自民党の支持率が一向に上昇する気配が見えないことでも証明されている。
鳩山首相と小沢幹事長が不正であるかどうか、残念ながら誰にも分かっていない。ただその額が巨額であったことだけに目線が集中してしまっている。それはまぎれもなくメディアが作ってきたものである。
お二人にしてみれば、片や先祖代々のブルジョワだし、片や普通の国会議員より蓄財能力が例外的に上手だったこと。そこは間違いない。が、その一点だけであれば犯罪にはあたらない。国民が悩ましい一番のポイントである。
民主党政権は、地方分権、官僚支配からの転換、生活者視点などをすべて政治主導で行うということで国民が総選挙を経て成立させた政権である。確かに現時点で不備が少なくないことは否めないが、理屈に合わないダムや道路整備を、それも官僚主導で進める政治体制に戻すことは決してあってはならないことだと思う。
前政権のヘドロと膿の量はハンパではない。しかし、そこで必要なことは国民が温かく見守れる現政権への期待であろう。
その信頼を取り戻すために何が必要か。鳩山政権のツートップはまさにメディア視点ではなく国民目線で決断する時にきている。