No.021 視点が変われば・・・・・

6月18日から定期観光バスになったスカイバス東京 http://wwwkybus.jp/home/index.htm lは、2階部分がオープンエアのバス。約50分間で皇居(内堀通り)や銀座を巡り、文字通りのパノラマ観光を楽しめる注目のバスだ。

2004年9月から不定期で運行していたが、延べ利用者が50万人を超える盛況ぶりで、この度の定期運行化に至ったということだ。

東京の観光は、昔から「はとバス」があまりにも有名だが、このスカイバス(日の丸リムジン・グループ)は趣向がまったく違う。バスを降りて○○巡りというものがない。ひたすら「車窓(天井はない!)と空」を楽しむだけ。しかしウけた。なぜか。

当然のことだが、視点が変われば景色は変わる。20年ほど前に日本で大ブレークしたSUVは4輪駆動やアウトドア感覚も人気の一因だったが、なんと言ってもドライビングポジションが高く、遠くまで見渡せる着座位置が好評だった。わずか数十センチほどアイポイントが高いだけで、運転の世界(視界)が変わってしまったのだ。

スカイバスを企画した人が、どういうヒントで屋根をちょん切った2階バスを考えたのかは知るよしもないが、バスの2階、それもフルオープンで走れば、知っているはずの景色も全部違うものに見えることは間違いない。つまり、利用者にとってはすべてがとてつもなく新鮮に映ったのだ。ここにヒットの要因があるとものと推察する。

同じものを見る、同じことを捉えるにも、視点を変えることで違う「もの」や「こと」が見えてくる、は真理なのかもしれない。

  ボディはドイツのネオプラン製、エンジンはメルセデス。こういう発想は、いわゆる既成概念にとらわれていると絶対に出てこない発想であろう。霞が関は言うに及ばず、国民にも要求される「視点のChange!」ではなかろうか。雨が降ってきたらどうするかって? その際はちゃんと簡易レインコートが配布されるそうだ。♪小さいことは気にしない、ワカチコ、ワカチコ♪

視点を変えれば真実が見える

全国交通事故遺族の会は、ドライブレコーダー(事故記録装置)を全車に標準装備するようトヨタの株主になって株主総会で訴求した。このレコーダーは事故の衝撃でフロントガラスに設置した小型カメラが作動し、事故の真相解明に役立てようとする装置。トラックやタクシー業界では一定の普及はしているが、約5万円程度の費用が掛かるため乗用車には普及していないのが実情だ。自動車メーカー側としても、結果的にその負担をユーザーに求めることになるから相当にデリケートな判断が要求され、早急な結論が出るような環境には今はないだろう。

しかし、事故原因を具体的な形で究明する手段は、おろそかに出来ないことも事実。利用者の視点(価値観)が変われば、意外とスピーディに展開するかもしれない。

足利事件で冤罪が確定した菅家さん。大きく問題点は2つあった。一つはDNA鑑定の精度が、ここ何年かで飛躍的に進歩し、司法は世の中の変化(進歩)に柔軟に対応した判断が求められるようになったこと。まさに大きく視点を変えねばならない部分だ。

もう一つは、警察の取り調べの可視化。前述のドライブレコーダーと同じような理屈となるが、取り調べの守秘性を何よりも重んじる現警察体制は、一向に前向きになる雰囲気にない。ここには、警察の公正と世論が考える公正とに大きな隔たりがあると感じずにはいられない。菅家さんをはじめ、多くの冤罪者がいるのにも関わらず、警察官僚はなぜ視点を変えられないのだろう。これではよほど取り調べを見せたくないのかと、世間に勘繰られてもしょうがない。

視点を変えれば地方分権

さて、今後の日本が復活するか長期低迷するかぐらいに重要な意味を持つ「地方分権

総選挙が近いことは間違いないし、尽きるところここが選挙の争点になることもほぼ間違いない。もちろんその道筋は険しいし、中央集権なる鋼鉄のように硬い壁を破ることは、少なくても政治の世界だけに委ねていては実現しないことも判明している。

中央集権の弊害は枚挙にいとまがない。道路整備、少子高齢社会対策、年金、医療、介護、雇用、教育、独立行政法人、天下り、ハブ空港、ハブ港、減反、食糧自給率・・・・果てはアニメの殿堂などなど。

その鬱憤は世論調査という形で、政権の支持率に表れているが、政策のシナリオを作っているのは事実上中央官僚たちだから世論の不支持の大元はここにある。だから地方分権ということになる。

今問われるのは、まさに国民の視点だ。

人はどこで生活していようとも、一定の営みをする権利を有する。もちろん地域による違いはあるのが当然で、それは各地域の主体性で行われる筋のものだ。社会生活の大半部分は地方の自治体による判断と裁量に委ねられる方が、民意と直結した行政が行われやすいことは自明であって、地域の特性や事情を考えずに何事も一律にしたがる中央がしゃしゃり出る理由なんぞ、今やどこにも見当たらない。

その仕組みの元が、ヒト、カネ、権限のすべてを中央に集中させる現在の中央集権だ。地方分権とは、文字通りヒト、カネ、権限をそれぞれの地域に移譲し、行政判断も地方自治に委ねることだ。当然ながら、責任の所在も地域ごとに負わねばならない。

冒頭のスカイバスではないが、形自体は同じバスでありながら、活用法や構造を変える(視点を変える)ことで、CS(顧客満足度を言うが、ここでは市民満足度)が劇的に変貌することになる。

今こそ視点を変えよう。そのためには、少なくても地方分権に熱心ではない候補者を当選させないところから有権者は始めるしかない。

2009.06.19記


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